第10回 食道再建・形成手術後の食道発声習得の実情
前回、最近の銀鈴会新入会員には食道形成(再建ということばも使われます)術後の方が増えてきていると申しましたが、こうした会員ではどのくらいの割合で食道発声を身につけることができるのでしょうか?その割合は単純喉摘グループより劣っているのでしょうか?この実態を調べるため、銀鈴会では平成10年1月から11年12月までの丸2年間に入会された会員396名について、これを食道形成グループと単純喉摘グループに分けて平成12年9月まで発声の進み方を比較してみました。この研究は当時国立ガンセンターにおられた内山先生が中心となって行われたものです。それぞれの人数は食道再建132、単純喉摘264で、1/3が食道再建でした。
まず食道再建グループの成績を表示しますと次のようになります。
| 術式と人数 | 初級へ進めた数と 比率所要期間(月数) |
うち中級までは? 所要期間は? |
うち上級までは? 所要期間は? |
| 空腸 (83) | 48/83 (58%) 平均 6.6ヶ月 |
28/48 (58%) 平均 3.8ヶ月 |
10/28 (36%) 平均 13.9ヶ月 |
| 胃吊上(30) | 21/30 (70%) 3.7ヶ月 |
10/21 (48%) 2.2ヶ月 |
8/10 (80%) 9.4ヶ月 |
| 皮弁 (19) | 15/19 (79%) 3.7ヶ月 |
11/15 (73%) 3.3ヶ月 |
9/11 (82%) 8.8ヶ月 |
結局、全体としてみると食道再建を受けて中級まで進めた人は、
132人中49人(37%)、上級まで行けた人は132人中27人(20%)でした。
これに対し、単純喉摘グループについてみると、264人中、初級まで進めた人は
264人中128人(48%)、所要期間としては平均5.8ヶ月、中級まで進めた人は、そのうちの117人、すなわち117/128=91%で、初級からの所要が平均3.2ヶ月、さらにそのうちで上級まで行けたのは117人中の72人(62%)でした。結局、こちらを全体としてみると、中級まで進めた人は新入会員264名中117人(44%)、上級まで行けた人は264人中72人(27%)ということでありました。
この結果についてはいろいろな見方がありますが、少なくとも食道再建を受けたグループの食道発声成功率も、決して低いとはいえない、ということが判ると思います。むしろ単純喉摘の方がみかけ上、初級へ進めた割合が低いのは、もとになる人数が多いだけに、かなり個人差があることも影響していると思われます。いずれにしても日常生活に食道発声を役立てるには、やはり中級以上の力をつけることが望ましく、その意味では食道再建グループでも、成功率がやや低いとはいえ、そう遜色のない結果がえられていると考えてよいでしょう。今後も食道形成・再建術を受ける例は増えると予測され、その指導の充実が重要な課題になると考えられます。
Last Update : 2004/04/07
特別寄稿
医学の目
第1シリーズ
- 第1回 喉頭がんについて
- 第2回 手術後の心構え総論
- 第3回 喉頭の構造と機能
- 第4回 喉頭摘出後の問題点
- 第5回 喉頭癌術後のQOLと声のリハビリテーション
- 第6回 食道と食道発声
- 第7回 食道発声における空気の取り込み
- 第8回 食道発声の習得状況について-その1
- 第9回 食道形成手術について
- 第10回 食道再建・形成手術後の食道発声習得の実情
- 第11回 声の出る仕組みについて
- 第12回 食道発声で声が出る仕組み
- 第13回 呼吸と過呼吸(過換気)症候群
- 第14回 食道発声がうまくいかない場合-なぜ声が出ないのか
- 第15回 食道発声における好ましくない習慣
第2シリーズ
- 第1回 声の高さについて
- 第2回 声の高さと強さ
- 第3回 「話す速度について」
- 第4回 ことばの音の種類と明瞭度
- 第5回 ことばの明瞭度・・・続き
- 第6回 歌と食道発声
- 第7回 ビバボイスについて
- 第8回 身体障害者の現状と老人保健について
- 第9回 喉摘者に対する国民年金・厚生年金保険障害認定について
